ボログ

若手俳優を追いかけて暮らしている

店先で怒鳴られていた女性店員の話

今回はヲタ活まったく関係ない話をします。

諸用でとある街へ出かけたとき。
マクドナルドの入口前で怒鳴り散らしているおじさん(というか、おじいさん?)がいた。
横にいるのは女性の店員さんだった。おじさんに怒鳴られながら、ペコペコと平謝りしていた。
人の多い場所なので、その光景は当然注目の的だった。けれど、誰一人、彼女を助けようとはしなかった。




私は学生時代、ドラッグストアでアルバイトをしていた。わりと大きな店舗だった。
2階はワンフロア丸々化粧品を取り扱っていて、私は2階を1人で受け持っていた。夕方までは美容部員さんがいたが、以降は閉店時間まで、私1人で働かされた。
女性社員が休みのときにシフトを入れられていたので、基本的に男性社員しかいなかった。時々、キャパオーバーになって呼出ベルを鳴らした。すると社員や他のバイトが上がってきてくれるのだが、化粧品に関する知識は喪女の私以下なので接客を頼めない。
だからまぁ、レジ対応以外で彼らを呼ぶことはほとんどなかった。


土地柄、変な客が来ることはしょっちゅうだった。
アル中のおじさんに絡まれて耳に息を吹きかけられたり、大量に商品を買った数日後に全て返品をしてくる(しかも毎度)人がいたり。
中でも一番怖かったのが、女装のおじさんが来店したときである。
念のため断っておくが、女装を否定しているわけではない。好きな格好をして生きる権利が、私たちにはある。
だがしかし、女装おじさんはピンクの透け透けタンクトップ、同じくピンクのプリーツミニスカート、シワシワの生足、頭は禿げ散らかしており、瞼は何かで真っ青に塗りたくられていた。
月曜から夜ふかし」に度々出て来る「よっちゃん」をご存知だろうか(知らない人はググってほしい)。
あのよっちゃんのような感じで、女装おじさんはアイラインをひいていた。まつげも書いていた。恐らく、黒の油性ペンで。

さすがに戦慄した。やべぇ奴が多くいる我が街だが、これほどやべぇ人間を見たのは久しぶりだ。人生で出会ったやべぇ奴ランキングトップ3に入る。
「好きな服を着る権利がある」と言ったって、さすがにTPOはわきまえてほしい。というか、よく職質もされずにこの店へ辿り着けたな。


2階にいた女性客は全員、即、いなくなった(そりゃそうだろう)。フロアに残されたのは女装おじさんと私だけ。
「頼むから話しかけないでくれ」
という願いも呆気なく散り、彼(彼女?)はヘラヘラ笑いながら話しかけてきた。ヤバめのおクスリもやってるような感じだった。
彼は「つけまつげがほしい」とか「お姉さんのおすすめのファンデーションは?」とか、色々聞いてきた。

もしかしたら、女装おじさんは本当に化粧品が欲しいのかもしれない。
その気持ちを踏みにじっていいのか?
おじさんは綺麗になりたいだけなのでは?
だったらしっかり、おじさんが求める商品を提案しなきゃいけないだろ?

私は意を決してレジカウンターを飛び出し、女装おじさんにプレゼンを開始した。
が、間髪入れず、彼はにやにやしながら言ったのだ。

「アタシのおっぱい、本物みたいでしょ?」

そうして私の腕を無理矢理掴み、おじさんの胸を触らせた。私は恐怖で叫びそうになった。
へいへいへいへいへいへーい!!!!!やっぱただの基地外だったよ!!!


と、そのとき、階段を登って来る足音が聞こえた。
ハッとして振り返る。そこには、店長がいた。
店長は当時40代前半くらいだったと思う。男だから女を守るべき、とかじゃなくて(絶対店長より私の方が力あるし)、肩書きを考えて、助けてほしかった。私は目で訴えかけた。

店長助けて。
これ、見て。現行犯じゃん。
店長。頼む。

店長は、私と女装おじさんを一瞥すると、何事もなかったかのようにスタスタ歩き出し、奥の事務所へ吸い込まれていった。
信じられない。この世に神はいないのか。
直後、体格のいいバイト男子が掃除にやってきた。
彼もまた、一瞬こちらを見たが、すぐに掃き掃除を始めた。下を向いて、全く私たちの方を見ようとしない。
いや、掃き掃除しとる場合か?こちとら大惨事なのだが??


もはや頼れるものは己の精神力のみだった。
きっと、ここで私が青白い顔をしたり、恥ずかしそうにうつむいたりしたら、女装おじさんは大喜びする。そうやって「女」が困る様を見て喜ぶタイプのクソ野郎に違いない。だから絶対、引きたくなかった。泣きたくもないし、震えるのも嫌だった。
私は、女装おじさんの胸を今一度掴んだ。

「真っ平らですね!!!

と言って、腕を振り払った。
その後、何事もなかったかのようにつけまつげやファンデーションのプレゼンを続けたが、期待した反応がなくて興ざめしたのか、女装おじさんは「あ、あぁそうなの…?」と、まともに話を聞いてくれなかった。
結局、女装おじさんは300円の安いつけまつげだけ買って帰った。まぁ、何か買ってくれただけマシだ。触らされ損(?)じゃなくて良かった。
でも、めちゃくちゃ恐かったし、気持ち悪かったのも消せない感情だ。しわしわのレーズンみたいな胸に触れてしまった感覚は、しばらく残っていた。


閉店後、私は店長とバイト男子に詰め寄った。

「2人とも見てましたよね?あの人がヤバい客だって、わかりましたよね?おじさんの胸つかまされてるところ、見ましたよね?」

と、言うと2人はけらけら笑いだした。

「だってあのおじさん、見るからにやべぇじゃん」
「恐かったんだよ、ごめんて。ボーロさん任せておけば平気かなって。信頼してるから」

開いた口が塞がらなかった。
以来、私は男性スタッフに期待するのをやめた。
実際、私が働いていた店舗は女性スタッフの方が気が強いし、気配りも出来た。助けてくれたのは、だいたいバイト女子だった。


しつこいようだが「男なんだから女を助けて当然」とは思わない。
しかし、この世には「女相手だと威圧的な態度をとる人間」というものが存在する。男性にはちょっと想像しにくいかもしれないが、そういう人間は結構いる。
助けてくれなくていい。でも、せめて隣にいてほしかった。それだけでありがたい。近くで睨みをきかせてくれるだけでいいのだ。
私はそこで4年働いたが、男性スタッフがそのような性被害(と言うと大袈裟だが)に合ったという報告はなかった。クレームをつけられるのも、女性スタッフばかりだった。




当時の記憶が蘇り、私はマクドナルドの店内へ入った。ちょうどカフェオレ味のシェイクが飲みたかったし。
注文し、会計したのち「あの、外にいる店員さん、怒鳴られてますが……大丈夫ですか?」と、レジにいた店員さんへ伝えた。

「あぁ…申し訳ございません。把握しております。あちらマネージャーなので、大丈夫です。お気遣いありがとうございます」

と、店員さんは頭を下げてくれた。
店側がそう言っているのに「でも…」と食い下がるのは迷惑だと思ったので、お節介を詫びて商品を受け取った。
外に出ると、中年男性がおじさんを諌めていた。

「いつまでそんなことやってるんだ!かわいそうだと思わないのか!?」

と、中年男性は叫んだ。
おぉ、すごい。私はシェイクを吸いながらその様子を見ていた。これでどうにかなるかもしれない、と安堵さえ覚えた。
が、火に油だった。おじさんは、余計怒り狂った。もはや何を言っているのかわからないくらいの勢いで叫びだした。くぁwせdrftgyふじこlpである。

「やめてください〜!><」

マネージャーが、おじさんと中年男性の間に入って叫ぶ。ド修羅場じゃねぇか。
主観で大変申し訳ないのだが「私のために争わないで〜><」的な言い方だった。正直に言うと、若干引いた。
あ、これ大丈夫だ。
そう思った私はその場を立ち去った。駅前におまわりさんがいたので報告しようかと思ったが、かえって迷惑になるかもしれないのでやめておいた。
結局、私も何も出来なかった。ぼんやりしながらシェイクを飲み、ふらふら帰路についた。カフェオレシェイク、美味しかったです。


私は、どうするのが正解だったのだろう。
レジにいた店員さんに「男性も1人付き添った方がいいんじゃないですか?」と伝えればよかっただろうか。
女性だから、たぶんあそこまでキレていたのだと思う。でも、中年男性が間に入ってもおじさんの勢いは止まらなかったしな。一度キレちゃったから、もう後には引けなかったのかな。最初から男性店員が対応していたら、そもそも突っかかってたのかな。
迷惑かも…とか考えないで、通報してもよかったのかもしれない。


何故「大丈夫だ」と思ってしまったのだろう。それを決めるのは私じゃないのに。
彼女が「助けて」と思っていたかはわからないけれど、どうにか助け舟を出すべきだったんじゃないかな。
考えると、どんどん落ち込んでいった。
自分だって同じような目にあったのに。恐かったのに。私はなんて薄情な奴だ。
懺悔したくて、この記事を書いた。付き合わせて誠に申し訳ない。


またこういう場面に遭遇……は、したくないけれど、もし遭遇したら、次は絶対どうにかしたい。
そもそも、男だから女だから、客だから店員だから、などという下らない理由で感情を露わにする人間がいなくなればいいのだけど。